― 1890年ボヘミア、放火魔の少女と血塗られた運命の系譜 ―
(Masha Early Works / 13歳の時の執筆作品)
Introduction(作品について)
中学一年生の時に執筆した、19世紀末のボヘミア(チェコ)から第二次世界大戦下のヨーロッパを舞台にした大河長編サスペンス。
わずか8歳で村を焼き尽くそうとした放火魔の少女マルタ。彼女の波乱に満ちた生涯と、激動の時代(社会主義者弾圧、ナチス・ドイツによるチェコ併合)、そして彼女を囲む大人たちが抱える「残酷で愛おしい血縁の秘密」を描いた、私の物語制作の原点ともいえる作品です。
Synopsis(あらすじ)
【第一部:山奥の隠遁者と放火魔の少女】
1890年、ボヘミアのとある農村で不審火が頻発する。犯人は、わずか8歳の少女マルタだった。 犠牲者が出ても反省の色を見せない不気味な少女に村中が怒り狂う中、ただ一人彼女を引き取りたいと申し出た者がいた。山奥で隠遁生活を送るドヴォルスキー老人である。
家政婦のクララと共に暮らす中、初めは恐ろしい行動を繰り返していたマルタだったが、二人の深い愛に触れ、次第に人間的な心を取り戻していく。 成長したマルタは類まれな頭脳を発揮し、プラハの大学へ進学。親友のユダヤ人少女ゾフィーの支えを受け、フランス留学へと羽ばたいていく。
【第二部:時代の暗雲と暗殺者の影】
フランスで社会主義者のフランソワと結婚し、幸せな家庭を築いたマルタ。しかし、夫と子供たちが警察の尋問によって命を落とすという悲劇に見舞われる。身の危険を感じたマルタは子供を連れて祖国チェコへ逃げ帰る。
やがて時代は第二次世界大戦へと突入し、チェコはナチス・ドイツに併合されてしまう。マルタはユダヤ人のゾフィーを連れてオランダへの逃亡を図るが、その途上、ナチス協力者となったかつての家政婦・クララと遭遇する。緊迫した沈黙の末、クララは二人を見過ごし、道をあけるのだった。
命からがらオランダへ辿り着いたマルタのもとに、ある夜、何者かが侵入する。それは、かつての恋人ダニェクだった。スパイとなりマルタ暗殺を命じられた彼は、彼女に銃口を向けながらも引き金を引けず、最後はマルタに静かに微笑みかけ、目の前で自決を遂げるのだった――。
The Truth of Bloodlines(明かされる血縁の真相)
物語のラスト、死の床に伏したドヴォルスキーさんからの告白と手記により、全ての人間関係が「血の呪縛」で繋がっていたことが明かされる。
【ドヴォルスキーの妹】ローザ ──(結婚)── ヴァ―ツラフ
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カレル(狂気の男)
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│(愛人関係) │(殺害)
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【クララの妹】ローザ クララの両親・夫
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マルタ・ドヴォルスカ(主人公)
- なぜドヴォルスキーさんはマルタを引き取ったのか?
- かつて騙されて巨額の借金を負った際、自分を救うために身を差し出した妹の「ローザ」。そして愛しながらも死に別れた妻と娘の「マルタ」。その面影と血を引く少女を救うためだった。
- なぜ家政婦のクララさんは、当初マルタに拒否反応を示したのか?
- かつて自分の家族と妹を殺害し、自らの人生を狂わせた男「カレル」。マルタの顔立ちに、憎きカレルの面影を鋭く感じ取っていたためだった。
Character Profile(登場人物)
- マルタ・ドヴォルスカ(Marta Dvorská)
- 8歳で放火を繰り返していた少女。ドヴォルスキーとクララの愛によって更生し、高い知性を発揮するが、時代の波と「カレルの血」という宿命に翻弄される。
- ドヴォルスキー(Dvorský)
- 山奥に暮らす穏やかな隠遁者。過去の悲劇と借金、愛する者たちの死を背負いながら、マルタに無償の愛を注ぐ。
- クララ(Clara)
- ドヴォルスキー家の家政婦。元・没落オーストリア貴族。一家を惨殺された壮絶な過去を持つ。最初はマルタを恐れるが、やがて真の母性を開花させる。
- カレル(Karel)
- マルタの実父。屈折した執着心からクララの家族を惨殺し、彼女の妹ローザとの間にマルタをもうけた狂気の男。
- ダニェク(Daněk)
- マルタの元恋人。後に時代に呑み込まれてスパイとなり、マルタ暗殺を命じられるが、愛ゆえに彼女の前で自ら命を絶つ。
Author’s Commentary(作者解説)
中学一年生の時に夢中で書き上げたこの作品には、現在の私の創作のルーツがすべて凝縮されています。
東欧・ボヘミアの冷たい空気感、歴史の暴力に引き裂かれる個人の幸せ、そして複雑に入り組んだ愛憎と血縁のミステリ。 ナチス占領下の暗闇でクララさんが見せた数秒の沈黙や、愛する人の前で銃を抱えて微笑んだダニェクの最期など、切なくも美しい人間の業を描こうとした初期の衝動が詰まっています。